名前の無い物語


空の言葉に
柚歌は少し溜め息を吐く

今聞いた話を
どこまで…信じられるのか


「まさか…拓さんがまだ生きてたなんて…。」

「俺も驚いた。けど、俺が今こうして復活して柚歌と話してんのも…アイツのおかげだ。」


もし、拓に出会わなければ
俺はずっと…あの暗い空間で生きていかなければならなかった


「…拓さんは、もう二度と…復活できないんだね。」

柚歌の悲しそうな声に
空も俯いた

残りの能力で空を生かした拓
もう彼には…自身を復活させる力は残っていない

アイツは一生…あんな寂しい場所で…たった一人で…


「…だけど、きっとこれが最善の選択だったんだろうね。拓さんはきっと…空を放って復活なんて出来なかった…。自分の罪を、償いたかったんだね…。」

思い出しているのだろう
柚歌の瞳から少しずつ涙が流れていく

もし、戦争なんて起きていなかったら
私達は…一体どうなっていたんだろう?

お姉ちゃんと拓さんは、きっと幸せになっていたのに…


止まらない柚歌の涙
空はゆっくり手を伸ばして、不器用に涙を拭っていた

瞬間目に入る、自分の手

「…大人っぽくなったよな、柚歌。」