名前の無い物語



空の言葉に
柚歌は顔を上げた


「あの日、俺は世界を創り直す為に『世界の刻』に向かった。そこで力を使って、旋律が聞こえる中で…俺は『俺』が消えていく感覚を味わった。」

「えっ?」柚歌は目を丸くする

空が何を話しているのか
柚歌はすぐに理解出来なかった


「次に意識が覚醒したときは、目の前が真っ暗な空間だった。けど、俺は動く事が出来ないし声を出すことも出来ない。
何て言ったらいいかわかんねぇけど…体は無くて、意識だけ存在してるって感じ。

そんな中俺は、これが無の空間って言うのかなって悟ったんだ。
俺には何も出来ない。ただ感じて、考えるだけ。…俺には、それしか許されていなかった。」

苦笑いを浮かべて話す空

想像してみても、あまりの恐ろしさに柚歌は一瞬身震いする

誰も居ない

何も出来ない


そんな中で、ずっと…


「けど、突然声が聞こえたんだ。」

黒い、何もない中で
俺に届いた…1つの声

「俺も最初は信じられなかったんだけど…その声の主は、桐谷拓だ。」