名前の無い物語


海の耳に届く、愛しい声
その声に…相手はもう既に誰か分かっているけれど
海はゆっくり振り向いた

肩までのふんわりした髪
小さな顔に、大きな瞳

そして、その瞳は切なそうな色をしながら海を映していた


久しぶりの再会


だけど…やっぱり何一つ変わってはいない


「…久し振り、華。」

フワリ、と微笑んで告げた海
その言葉に、少女ーー木梨華の瞳は潤い始める


「…本当に、海?」

震えている声に、海は一度俯いて
「当たり前。」とそう告げた


「っ…海っ!!」


我慢していた糸が切れたように
涙を流しながら華は海に駆け寄る

走ってきた華を
海は優しく抱き締めた

「海…良かった。やっと会えた…。」