名前の無い物語


二人はとっさに振り返る
そこには、体操着を着た滝川吉野の姿があった


「滝川君!?」

「お前…何で…。」


驚きを隠せない二人
そんな二人に、吉野は一度目をそらした


「…今までごめん、後藤、長瀬。」

最初に吉野から出た言葉は
二人に対する謝罪だった


ようやく気付いた

一人だと、セカイは自分だけだと思い込んでいたあの日々

だけど違った
コイツらは…ずっと俺を見ていてくれたんだ

「…ありがとう。」

そう言って、少し笑った吉野に
二人も柔らかく笑った


「長瀬、昨日の怪我で走れないって柚歌から聞いて…。

だから、俺が代わりにアンカーを走る。」

「は?」予想にもしてない言葉に
駿介は声を上げる

臆する事無く
吉野は…駿介を見据えた


「俺がクラスで一番速いんだろ?
なら、アンカーは俺が走るべき…そうだろ?」