名前の無い物語



「…。」


何だよ



「あ、でも…アンカーは長瀬君がやってくれるから大丈夫だよ!
長瀬君は滝川君の次に速くて…。」


菊池加奈子の言葉は
吉野の耳には入らなかった



何だよ…それ…



「…悪いけど、俺は出ないから。」


絞り出したような声でそう告げて
吉野は紙を菊池加奈子に押し付けた


「オイ吉野。」


「もうちょっとよく考えたら?」


海と柚歌の言葉にも、吉野は首を振る



分かってる


逃げてるって事くらい…分かってるから!



「っ!」


瞬間、吉野が感じた
嫌な…闇の気配


「…デュアンテだ!」


「えっ?」


「ちょ、吉野っ!!」


二人の制止も聞かないで
吉野は走り出した