名前の無い物語


三人の足は止まった


アパートの入り口
あそこが、吉野の家


その入り口に、見覚えのある制服が目に入った



「あっ!」少女も気付いたのか、吉野達の下に駆け寄ってくる


長い黒髪を二つくくりにして
眼鏡をかけて、吉野と同じ制服に身を包んだ少女



「た、たた滝川君!良かった…ほ、本当に帰ってきてたんですね。」


めちゃくちゃ吃りながら
少女は胸を撫で下ろした


「…?」



誰だ?
俺を知ってるって事は…クラスメート?


「あ、私の事覚えてるわけない…よね?同じクラスの、菊池加奈子です。」


ペコリ、と菊池加奈子は頭を下げた



「…ごめん。」


「あ、謝らないで下さい!私の事なんて覚えてなくて当然です!私、地味だし…。」



アハハと笑う菊池加奈子に
吉野はどうしても罪悪感を抱いた




「それでその…菊池さんは、何でここに?」


てか何で俺の家知ってるんだろう?


「あ、えと…彩夏ちゃんから滝川君が帰ってきてるって聞いて…これを渡しに来たの!!」