名前の無い物語


一瞬ちらついた、知らない光景
その光景に、吉野は笑うのを止める


「吉野?」


「どうしたの?」


顔を上げれば
目の前には自分を心配してくれている二人の姿



…二人がいれば
俺は、もう一人じゃない



「…何でもない!」


吉野はもう一度笑って
二人の前に歩き出した



大丈夫
二人が信じてくれるなら


あの映像も、本当の自分も…ちゃんと受け入れられる
そんな気がする




「…。」


吉野、大丈夫だろうか?


海は吉野の背中を見つめた



寧々音は、吉野を信じてくれと言っていたけど
信じる事で…本当に何か変わるのか?



だけど、吉野が少しずつ



少しずつ…笑ってくれているだけで、俺はどこか嬉しかった



「あれ?」