名前の無い物語


声に振り返ると、階段を上り終えた海に出会った



「海、早いな。」


「お前こそ。てか、もうすぐ時間だろ?」


海の言葉に吉野は時計を見ると、確かにもう集合時間だった


「語り部と話してたのか?」


「あ、あぁ…。」


「?」吉野の反応に、海は首を傾げる


何となく
何となくだけど…海と柚歌には知られたくない


そう思った



「吉野、話してた通り…行くか。」


「分かった。」   


吉野は瓶を手に取った



つい少し前
海と話して決めたこと


柚歌をこの世界に置いていく



それが、吉野達の結論だった



旅を始める時、この世界に帰りたがっていた柚歌
始めるキッカケは、旅をした方がこの世界に帰れるか確立が高いと思ったかららしい


この世界に帰れた今


柚歌は…この世界に残った方が良い



瓶を開け、粉を振りかける
キラリ、と上空に出来た光の穴


徐々に、二人は穴に導かれていく



「待って!」