名前の無い物語






「クソ…見失った!」


少年が起こした風が止んだ頃には
吉野の姿は無かった



「でも、まだこの建物の中にいる筈よ。」


「あぁ…、今すぐ探しにーーガシャン



走り出そうとした足を止めたのは
さっきまで自分達が居た所から聞こえた音


「…皆。」


この音の原因は、向こうで喧嘩している祐希達
デュアンテを止める為に、足止めをしてくれている彼等


…祐希達にいつまでも負担はかけられない
けど、このままじゃ吉野が…



ーー俺は大丈夫だからーー



「…柚歌、先にデュアンテを倒そう。」


「えっ?」海の言葉に柚歌は目を丸くした



「確かに、そっちの方が結果的に良いのは分かってる。けど吉野を一人にするわけにはいかないわ。

もしあの占い師の言うことが本当なら…吉野は「大丈夫。」



柚歌の言葉を遮って
海は笑みを浮かべた


「アイツが『大丈夫』って言ったんだ。だから俺達はそれを信じてやろうぜ。

それが、いつかアイツの心を救うきっかけになると信じて。」