俺には理解できない。 『母親』であるよりも『女』であることを選んだ遙香。 その遙香の借金を返すために和香はここに居る。 「母は、・・・・・・母ですから」 「もう『母親』じゃねぇだろ」 俺の声に和香は瞳を細めた。 そして、 「それでも――」 何かを言いかけて、ハッとしたように唇を塞いだ。 「・・・・・・何?」 そう聞いたが、 「なんでもないです」 首を振って、 「明日はきっと満月ですね」 と、視線を俺から窓に移した。