しかし、どうやって逃げ出そう。 まだ書類も見つかっていないし。 突然、途中で帰ったら怪しまれる。 また、何か嫌なことをされたらどうしよう。 仕返しされたらどうしよう。 どうしよう! 散々悩んだ挙句。 「はい、もしもし、はい。……ああ、そうですか。はい……わかりました。すぐに行きます」 と、携帯片手に小芝居をして、さも誰かに呼び出されたフリをした。 「すみません。ちょっと急用みたいなので失礼します」 と、誰の何の急用かも告げずに、わたしは一方的に頭を下げて書庫を出た。