掃除を全て終えた夕暮れ前、ちょうどお祖母ちゃんからお節を取りに来なさいという電話がかかってきた。お祖母ちゃんの家は、電車で私の家から6つ目の阿部東駅を降りたところにある。気候の良い日や、遠出の予定があるときは自転車でお祖母ちゃんの家に行くけれど、今日は寒いし、自転車の揺れでお節が崩れでもしたら堪らないから電車に乗っていくことにした。
 切符を買い、改札を抜けたときにちょうど電車のドアが開き、あわてて電車に乗り込んだ。電車の中は買い物帰りの夫婦や、初詣に行くのであろうカップル、年越し忘年会に向かうどこかの大学生、足りなくなった掃除用具を買いに行く人などで込み合っていたけれど、イスに座れないほどではなかった。入ったところから1番近いところに座ると同時に電車がゆっくりと駅から離れて行った。
 電車に乗って暫くすると、暖房の動いている音が聞こえるほど暖かい空間と朝から大掃除で体を動かしていたことで、だんだん目蓋が重くなっていき、私は心地の良い睡魔に誘われて意識を手放した。
 意識を手放す瞬間脳裏に浮かんだのは、卒業証書と婚姻届を広げるお父さんとお母さんの笑顔だった。