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「なんで兄さんだけなの?」


「まぁいろいろあったからな」


中庭にたどり着いた神威は、妹の隣に座った


「美月はどうしたの?」

「飲み物を買ってくるって言ってた。……なぁ、俺って美月に嫌われてるのかな?」


「今頃気づいたの?」


小夜子はポカーンと口を開けて神威を見た


「いっつも避けられてたけど、いつかは素直になってくれるって思ってた。けど美月は昔みたいに振り向いてくれないんだ」


「兄さん、それは仕方ないよ。美月には記憶がないの。もう前の美月じゃない」


「わかっている。俺は今の美月も好きだ。けど、昔のように接して欲しいんだ」


昔……


それは平安と呼ばれていた時代


神威には前世の記憶が鮮明に残っていた


自分が頭領と呼ばれ、月子と呼ばれる少女を鬼に変えて妻に迎え入れたことも……


神威には昨日のことのように覚えていた