簪彼女。



ぷすりと、簪を結び目に突き刺した。


驚いたように高橋くんが声をあげる。



「ごめんね、高橋くん。でもさ、これをすると簪がさ、折れそうになるからなーって……」



ちょっと、出し惜しみしちゃいました。


そう言いながら、突き刺した簪をグイッと手前に動かした。


少しだけ、ミシッて音が聞こえた……ような、聞こえないような。


ちらりと高橋くんを見てみれば、唖然として手元を見ていたら。


はらりと落ちる風呂敷が靴の上に落ちて、私達の腕を無理やり繋げていたものは取れたのだと実感する。


けれども。

何故か、胸の辺りがツキンと痛んだように感じて、私は胸の前に手を置いた。



「はい、取れた!」



笑いかけて見るのだけれども、高橋くんはいまだ唖然としたまま。



「えー……」



ただひたすら、驚いてくれているようだった。


何だか照れくさくて、私は頬が少しだけ紅潮していくのを感じる。