家に戻った薫は、家の玄関の前にたたずむ背の高い人影に気がついた。

どこか見覚えのある姿に、薫は足を止めて目を見開いた。

足が震えた。


そこにいるのは、いるはずのない男だった。

男は薫に顔を向け、忘れようのないあの声で、言った。


「おかえり、薫」

玄関の前でたたずむその男は奏雲だった。