神の森

 
 光祐は、祐里が旅立って以来、洋館の自室に戻って来ていた。


 薫子の視線を思い出しながら、部屋に入り、洋服箪笥の鏡を見て驚いた。

 白いシャツの襟元にしっかりと美和子の口紅が付き、

唇も薄っすらと紅色に染まっている。


 慌てて洋服箪笥から、シャツを出して着替えると、洗面室で顔を洗った。


(最近の若い女性は早急だな。

 あの時、風が吹かなかったら、誘惑に負けていたかもしれない。


 祐里、このようなことになってしまって申し訳ない)


 光祐は、祐里と離れて暮らすうちに、淋しさからかこころに隙を作って

しまった自己を洗面室の鏡に写し出して反省していた。