「あッ周、おはよ。…今日は記念日だね。」





校門でちょうど会った藍は言った。





「あぁ…。」





教室に着くと、みんな…というか“今日”を知っている人たちが僕の方を気遣うように向いた。





「長倉…。」





その中でも親友の杉山徹が声をかけてきた。





「早いよな。もう一年経ったんだよな。杉山、別気ぃ遣わなくていいからさ…サンキュ。」

「気ぃ遣ってなんかないよ。俺たちだって…悲しかったんだ。」

「そうだな…。」





僕と杉山はお互いに苦笑いした。





「ほッほら!!二人とも、HR始まるよ!!」





藍が言った。

藍だって辛いだろう。

僕がふられてから、ハルカと藍は急に親しくなったから…。





藍は知っている気がする。

なぜハルカが付き合えないと言ったのか。

ハルカは何を考えていたのか…。

だけど僕は、聞けない。





ふと、佐々木と目が合った。

にこっと笑ったその笑顔はなんだか僕をほっとさせた。





窓の外を見ながら、僕は思った。





春の風はあたたかいのだ、と。