「名前なんて言うの?」 舞う桜の花びらを掴もうとしていると、先生に尋ねられた。 「直井」 「水野だ」 水野…か。 「どーも。俺、人混みが嫌いなんですよ」 この学校は都会にあるにも関わらず、大通りから遠い静かな場所にある。 「へぇ…」 「静かなとこが好きなんだ」 今、この瞬間が幸せだ。 広い中庭にいるこの瞬間が。