資料室からクラスに戻るとき……


陽は気まずそうに自分の髪をクシャっとした。
これは、陽の癖。

なんだかかわいらしい癖。






「あーあ……離れたくねぇな」


「……っ」


「絢はどうなの?」


「あたしは……」


「こんなに好きなのは俺だけですか? お姫様?」







う……っ。

いたずらスイッチ入ってる……。
笑顔がそのことを表してるし。


陽は意外とSなんだもん。






「ずるい……」


「絢の方がずるいじゃん」


「どうして? あたしはずるくないよ」


「俺にばっかり言わせて、自分いわねぇし」







少し口を尖らせ、まっすぐにあたしを見つめる陽。






「あたしも……離れたくない。 一緒にいたい……」





こんな恥ずかしいこと……
なかなか口になんて出せないよ。

あたしの言葉に満足したのか……陽は太陽みたいにあたたかく笑って、あたしの腕を引っ張った。







「ちょっ! 陽!?」


「ん?」


「どこ行くの?」


「別に決まってねぇけど、ふたりになれるところ!!」







いつもいつも嵐のように強引だよね。


でも……

逢いたいときにはすぐに駆け付けてくれて、悲しいときには抱きしめてくれて……


助けてほしいときには……必ず現れる。


そんな、自分の気持ちに正直に行動できる、
真っ直ぐなところに惹かれたのかな……。




子ども……ときどき少年。のち男の人。


何度会っても……あたしは陽がダイスキです……。