それにしても……
どうしてこんなに紅白幕は重いの?
「重……っ」
紅白幕を抱えながら歩く。
資料室は別校舎で遠い。そして、紅白幕は異常に重い。
足元は見えないし、ふらつく。
……大変だな。
「ったく、なにしてんだよバーカ」
……?
後ろから耳もとで声がした。
低くて優しく甘い声……。
「……陽」
「重いものひとりで運んでんじゃねぇよ」
「だって……」
「貸せ」
あたしの持っていた紅白幕を、軽々と陽が持ちあげた。
そして、あたしの前を歩き出す。
「陽! それ重いからあたしが持つ!」
「重いから持たせられねぇんだろ。来いよ」
「え?」
「どこに片づけるのかわかんねぇから」
そう言いながらも陽の足は資料室に向かっていた。
片づける場所……
わかってるよね?
「でも、陽……。クラス違う」
「あ? クラスの片づけは絢の次。絢が最優先」
「……ありがとう」
陽の優しさの出し方は、いつもずるい。
すぐに気持ちをすくってくる。
あたしは……
陽の優しさを知って、余計に好きになってしまうのだろう。

