始めは少なかった会話も日に日に増えていく。
芸能人の話で盛り上がり、
教科担任の話で盛り上がり……。
あたしと由美がいちばん盛り上がったのは、大好きなアニメの話。
それからのあたしたちは、いつも一緒に過ごすようになった。
由美と仲よくなってからというもの、
男の子たちがよく話しかけてくる。
授業と授業の休み時間だったり、昼休みだったり……。
最近では放課後も。
あたしは由美と違って、男の子とはまず話すことはない。
唯一気軽に話せるのは……。
「絢。おはよ」
「優! おはよう」
「今日はヒマ?」
声をかけてきたのは、桜樹優。
あたしの幼なじみで、親同士も仲良し。
記憶がないときくらいからずっと一緒。
そう、これがあたしの唯一話せる男の子。
周りの人は、優をかっこいいという。だって、4C揃いの人のひとりだから。
「桜樹!」
「な、なんだよ水崎!」
「今日は、あたしと絢が先約なんです~」
「俺も一緒は?」
「嫌。絢はあげない!」
その勢いに、優は少し引いている。
「絢はお前のじゃねーだろ」
「桜樹のでもないと思いますけど~」
由美はあたしを抱きしめながら、優と言い合いを始めた。
その言い合いは収まることなく……
ヒートアップしていく。