「絢のクラスってなにやるんだっけ」


「夏祭り!」


「クラスの中で何個も店出す、って感じ?」


「そう。女の子はみんな浴衣で男の子は甚ベイを着るの」






中高一貫のこの学校は中等部・高等部合同で文化祭が行われる。


毎年、文化祭は盛り上がる。
とくに、高等部が準備する模擬店はいつも大盛況だったのを中学の時から見ていた。







「じゃあ、午前中に店番入れとけよ」


「うん」






そう言って1組をあとにした陽。

足の力が抜ける。
陽の言葉がうれしすぎて、その場に座り込んでしまった。


すると……。

あれ……?


黒いケータイが落ちていた。水色のクマのストラップがついているから陽のものだ。

これって、友だちや家族との連絡に使うって……。
ないと困るケータイじゃないのかな……?



拾うと画面に出ていたメールが目に入った。




【あたしも陽くんにそのくらい想ってもらいたかった……。やっぱり、残酷だよ】


そんな内容……。

そしてあたしは、送り主の名前を見てしまった。
みなければよかったと後悔する……。驚きすぎて声も出なくて……。



だって、送り主は由美だったんだから……。