陽のことを好きか聞いてきた優は、学校を出てから、一言も口をきいてくれない。
「優?」
「……」
「優! 怒ってる?」
「……あたりまえじゃん」
「なんで?」
「鈍すぎだろ……。絢は鈍すぎんだよ」
鈍い……?
優はあたしの方を向いて、真剣な眼差しをみせた。
優の見たことのない眼差しに、目を逸らしたくなった。
「俺は、ずっとずっと好きなのにさ」
「……優?」
「あ……! やべぇ……。フライングだ」
フライング?
今日の優は本当によくわからない。
「今のなし! よし! 忘れろ!」
「うん……」
「そこはうなずくんだ……。せめて『忘れない』って言ってくれれば期待した」
「期待させたら悪いから」
「陽だけって感じだしな。でも……忘れないで考えてくれたら嬉しい」
そう言って、優は笑う。
やっぱり違う……。
いつの間にか、男の人になっていた。
もう、小さかった優じゃない。 すべて、男の人のもの。
そんな会話をして家に到着した。
「じゃあ、また明日」
「うん。送ってくれてありがとう」
優は家まで送ってくれた。
家が近いのにあたしが家に入るまでそこにいてくれる。
笑って手を振った優はいつもの優に戻っていた。