泣かないよ。

陽が心配するから……。
そう思ったのに……。


みんなで仮想上の遺族控室で呼ばれるのを待つ

でもあたしは、外に出て空を見上げた。



陽が白い煙となって登っていく。



あたしは
陽がいないとダメなんだよ……。




『幸せすぎて怖い』
幸せすぎて失うことが恐かった。

うれしさや幸せと表裏一体にあるのが痛みと不安だった。
全部、陽が教えてくれたんだよ。



陽の姿がなくなり
生々しくて涙が溢れた。





「本当にいろいろありがとうね」


「陽はあたしにたくさんのことを教えてくれました」


「陽は幸せだったと思う。だってね、絢ちゃんみたいな素敵な子出逢えたんだもの」





お姉さんは、うれしそうに笑う。
こんなにいいお姉さんが姉弟でよかったね陽……。






「陽はね、いつからか心を閉ざしてしまって、笑いもしなければ怒りもしなかった。そんな子だったんだけどね、絢ちゃんと出逢って想って想われて、絢ちゃんのことを想って絢ちゃんを手放した。あの子があんなに人を大切に想う姿は初めてみたのよ」





紗雪お姉さんと、空を見ながら話した。
陽は見ているのかな?





「結果的に陽はいないけど、陽は生まれ変わるわ」





生まれ変わる?





「また、絢ちゃんと出会うために」




陽……?
あたしは今起きていることすべてを、受け止めるよ。

今を生きるよ

まだ
たくさんの何かがあるはずだから