陽の病室では、機械の音が
ピッ……ピッ……と鳴っている。






「ねぇ、陽は助かるんでしょ?」






陽の主治医は答えず、ただただ首を横に振っている。

泣くな……
涙が死神を連れてくる……






「お医者さんなら、治してよ!」





初めて、ヒステリックに叫んだ。
あたしがおかしくなったのはそのときだけ。





「……あや……やめろ?……もう十分だよ……」


「陽……?」






主治医とお母さんは出ていった。
かすれている陽の声

手招きされて陽に近づく





「いくら……医者でもさ……もう無理なんだよ……」


「なに……言ってるの?……夢叶えるって……」


「ごめんな……。俺も……けっこう……つらい……」






陽はあたしの頬の涙をぬぐい、微笑んでいる。

……あたたかい手
はじめて……陽の手があたたかかった。






「長い……道のり……だったな……」


「……っ……」



「おそれも……悲しみも……苦しみも……孤独も……多い一生だった」





涙を流しながら、陽はあたしに語りかけている……
よう……がんばってよ……っ

未来を……信じようよ……






「でも……お前に出逢って……その多くに……耐えられた」


「……っ……うっ……よう……」






泣くことしかできないあたし……

どうして陽なんだろう……。
いつも、いつも……


陽だけどうして苦しまなきゃいけないの?