「今日はお母さんが夜勤だから泊まっていきなさい。明日は学校休みなんだから」





土日があるのがうれしい。


毛布を渡してくれたお母さんに陽とふたりでお礼を言った。

幸せだね。



夜……
あたしは病室のイスで毛布をかぶって読書をしていた。

なにも話さない。


ベッドに備え付けの机
それに頬杖をついていた陽はしばらくすると、机に突っ伏すような体勢になり、髪をクシャっと握っている。


そして、弱った声で……。





「距離が遠いだろ……」


「えっ?」


「そばにいろよ……」




こんな姿も好き。

何度抱きしめられてもドキドキする。
何度キスされても恥ずかしくなる。


陽の伏し目がちな瞳が大好き






「なあ……幸せってなんだろ?」


「なんなんだろ……。絢は陽といられることが幸せだと思うなぁ」


「ハハッ。幸せってスゲー重いもんだよな」






あたしは毎日思う。

いつでも死と向い合せにいる陽が、毎日なにを思って過ごしているのか。


これからの未来
なにを想像しているのか






「絢……。お前の思い描く未来に俺はいるか?」


「陽のいない未来なんて想像もできない」


「お前と出逢って、運命さえ変わった気がする」






あたしだって同じ。

陽に出逢って、一度失って、最愛を信じて

永遠を信じた――――……


……愛おしい
その言葉の意味も全部知った。



あたしたちは

ふたりで未来を歩んでいる


明るい未来を想像しながら。