涙がポロポロとこぼれて止まらない。
お母さんはあたしが泣き止むまで一緒にいてくれた。


やっと泣き止んだあたし。

腫れた目で陽の前に戻れない。
それに気づいたお母さんは、目を冷やすように氷を取ってきてくれた。


今はお手洗いで鏡とにらめっこ……。





「ぶっさいくぅ~っ」





目が赤くて変

そして、目が腫れたせいで顔もおかしい。


ひとりでブツブツ言いながら、あたしは少し腫れぼったさが引くまで冷やし続けた。

これなら陽……気づかないかな?






「遅くなってごめんねっ」




病室に笑顔で入る。






「遅いっての! みんな帰って行ったじゃん」





ほんとだ。
優も由美も奈菜もいない……。

みんな帰っちゃったんだ……。





「ちょっとこっち来い」


「なんで?」


「いいから」





陽の目つきが鋭い……。
近づくと片手で頭を引き寄せられた。





「なんで俺のいないとこで泣いた?」


「なっ……泣いてなんてないよ」


「嘘が下手。言えよ」






低くて甘い声

くすぐったくて目をつむる……。
ドキドキが止まらない。

ベッドに座っている陽があたしの体を思いっきり抱きしめる。

鼓動が重なる……。






「俺にいえねぇの?」


「……あたし……お医者さんになろうと思うの……」


「医者?」


「うん。陽や陽と同じ病気で苦しむたくさんの人を救いたい…。」




しばらく抱きしめていてくれた。

そして、優しい言葉が耳元で囁かれた。






「がんばれ。俺は待っててやるから」


「約束ね」


「ああ」





病室のドアがノックされる。
急いで離れてドアを開けるとお母さんが微笑みながら立っていた。