あたしが聞いたとき、陽は『大丈夫。まあ無断外泊して怒るのは絢のお母様くらいかな』


……そういってふざけて笑ってた。
ちょっと罪悪感に襲われながらも、みんなで病院に向かった。






「よーう」


「優、テンション高いなぁ……」


「元気?」


「今日はちょっと……ハハっ……」


「無理するなよ」






みんな陽を心配していた。
陽は笑っていたけど、苦しそう。

あたしは飲み物を買おうと病室を出る。


バッタリ、白衣姿のお母さんに会った。






「お母さん!」


「陽くんのお見舞いね」


「うん」


「少し話そうか」





そう言ってお母さんは、あたしを自販機の前のイスにうながした。

こんなところでお母さんと話すのは初めて……。


お母さんはあたたかいミルクティーを買い、あたしに手渡してくれる。そして、あたしの隣に腰を下ろした。





「お母さん……」


「なに?」


「あたし……お医者さんになろうかな?」


「陽くんのため?」


「まーね。陽や陽と同じ病気で苦しむ人を助けたい。やっぱり、無理かな?」






初めて話す、将来の夢。

陽と出逢って、あたしの夢ができた。
進路が決まった。


全部、全部陽のおかげ






「今からでも、頑張りなさい」


「それでね……」


「ん?」






あたしの頭は、いつもいつも陽のことと

陽の病気のことでいっぱいなんだ。


お母さんの前で泣くあたし……。
情けない





「っ……それまで……陽っ頑張ってくれるかな……っ」


「っ……絢っ……大丈夫よ」






お母さんに背中をさすられる。


神様でもなんでもいいから陽を助けてくれるものにすがりたい……。



陽を連れて行かないでほしい……。


陽の願いがかなうこと。あたしの願いだけれど……。

だけど今……
今のあたしの願いは


陽が助かること