毎日、毎日あたしは欠かすことなくにお見舞いに行った。
今日はお花を持っている





「陽!」


「毎日ヒマだな。お前は……」


「なら来ない」






あたしがきびすを返して病室を出ようとしたとき

カタンと音がした。
なにかと思って振り向くと陽がニタっと笑って、さっきと同じ音を鳴らす。


指についていたパルスオキシメーターを机に置いた音だった





「陽!」


「帰るなよ。ほら行くぞ」





白い布団をめくった陽は、パジャマじゃなく私服を着ていた。

驚いていると
あたしの手を引く。





「どこ行くの!?」


「ガッコっ」


「外出していいの!?」






陽は走っている。
元気なんだ……。

安心半分、心配半分。






「いいわけない! 内緒だからな」


「なっ! どうして!?」


「約束果たすよ!」


「なんの!?」


「バスケ。 由美に聞いた! 明日からの体育の授業、バスケなんだって?」





あたしの手を引いて走る陽。
陽のうしろ姿はあの頃と変わらない……。

柔らかい長めの茶色い髪が揺れている。


あたしの大好きな背中が目の前にある





「バスケ教えてくれるの!?」


「ああ 約束だしな」





つながれた冷たい手から、痛々しさが伝わってきた。
痩せてゴツゴツしている。