「俺、しつこく絢が好きだから……。だから、少しの可能性を伸ばしたい」


「優……それでも……」


「言うなよ。俺は頑張り続けるから。 俺を見てくれるまで。だから……」






続きを言いよどんでいる。
あたしの手をそっと握って優は……






「陽のこと忘れられなくても、俺と付き合って」


「どうしてあたしなの? 奈菜は優が大好きなのに……」


「奈菜が俺を好きでいてくれるのは感謝してる。でも、俺が好きじゃないからしょうがねぇんだよ。 俺のこと好きじゃなくても、使えよ。効率よく」





効率よく優をつかう?

あたしは優をものとして扱うの?


こんなに、こんなに想っているのに……

人はなぜだれも傷つけずに生きていけないの?






「優はものじゃない」


「大丈夫だから。 利用しろよ?」


「……優っ……」


「好きだよ……。俺が支える……。味方になる……」





泣いているあたしを優しく抱きしめてくれる。
震えている肩をさすってくれる。

大きな胸の中はあたたかくて
久しぶりに心が安らいだ……。



こんなあたしでごめんなさい……。


あたしは、優に甘えるほうを選んでしまった。
優をたくさんたくさん傷つけるかもしれない……。


そのときのあたしは、つらくてしかたなかった。



一度愛される心地よさを知ってしまった分、
心も身体も寂しかったんだと思う