目の前が涙でにじんで
陽の顔さえ思い出せなかった


移り変わる季節の中で
おいてきぼりのあたし

涙が頬を伝い、想うことは


――――――……陽はあたしのすべてだった





「……っう……ようっ……」


「陽じゃねぇけど、どうした?」





優しい声がした

いつもいつも本当につらいときばかり現れる。


駅に向かう歩道橋の上
暗くなった空を見つめていたあたし。





「優……っ、陽にフラれちゃった……っ」


「……そっか。 でも泣いてたってしょうがなくね?」


「……でもっ……」






優しい優はあたしの頬の涙をぬぐい
まっすぐあたしを見つめた。

あたしはこの強い瞳に弱い。





「泣いてるヒマがあんなら、泣きながら努力しろ」


「……えっ……?」


「泣いてただけじゃなにも変わんねぇだろ。 陽よりいい男見つけて見返してやれ」





優はいつだって心に寄り添ってくれた

つらいとき、そばにいて頑張れるきっかけの
言葉をくれた


もしも
あたしが優を好きになっていたら、こんなにつらい思いはしなかったのかな?



陽より先に好きになっていたら、
こんなに涙を流さなくてもよかったのかな?