陽は、優しく悲しそうに微笑んであたしに軽くキスをした。
「絢、別れよう?」
「……やっぱり」
「気づいてた?」
「なんか、いつもと違ったから。胸騒ぎはしてた……。でも……」
別れは受け入れる。
陽がそうしたいならしかたがない。
だけど、別れる理由がほしい……
愛を誓った。
だから、それを終える理由が……。
「理由……聞いていいかな?」
「……好きな女ができた」
「……そっか」
それだけ言い、あたしは言葉を探した。
やっとしぼり出したのは……
「幸せになってね……」
「…っ絢。ごめん」
あたしの両手を優しく握りながら言った。
……『別れよう』という言葉に合わないほど……
優しい口調。
涙は止まらない
だけどきれいに終わりたいから。
「陽っ! あたしは大丈夫。 謝らないで」
あたしはなんとか明るく笑って見せた。
陽に頼り切りはもうおしまい。
そして陽ともおしまい……
「絢、お前なら本当に好きで好きでどうしようもないやつに出会える」
「うん。 陽との恋はその恋への準備期間かもねっ」
「幸せだった。 絢に愛されて」
魔法が解けていく
夢はいつか覚めないといけない
覚めることを忘れてしまった夢はどんなに幸せな夢だとしても
悪夢にかわってしまう