あたしがそんなことを思っていると、
由美が声をかけてきた。
「なぁに? 陽くんと絢! すごくいい雰囲気じゃなぁい?」
「「由美!」」
「あらら、息ぴったり」
「そんなんじゃねぇよ!」
「そうだよ!」
由美はくすくすと笑う。
そして、陽を見ながら言った。
「この間、食堂で人に囲まれてたのは陽くんだよ」
「え? そうなの?」
「中学の頃から陽くんの周りには人が集まるの」
陽が人気者なのが、わかる気がする。
端正な顔立ちは女の子好み。
それで、男の子にうとまれていると思いきや、壁を作らない陽の態度が周りに人を呼び寄せる。
それは、陽が持つ優しい雰囲気と屈託のない笑顔の魅力。
「じゃあ、あたしはまた歌ってくるね」
そういって由美は亮くんの歌っている途中に乱入していった。
「絢、メアドおしえて?」
「なんで?」
「なんでってお前……」
「あっ……ごめ……」
「また、しゃべったりしてぇからだけど……?」
「……」
「イヤ? 俺と連絡とんの……」
「イヤじゃない……よ…。あたしも…陽と連絡したい」
「じゃあ、赤外線しよ」
カラオケの終了の時間が迫っていた。
陽と連絡先を交換すると、ふと思う。
「陽と学校で話せる?」
「あんま話せないからメールとか電話」
「あ、そっか」
「や、俺、いつも周りに人がいて……なかなか他の人としゃべれないっつーか……自由がないっつーか……」
陽はため息をつきながら苦笑いした。