好きな人ができれば、
由美みたいにかわいくなれるかな。
明るく真っ直ぐになれるかな。
「歌わねぇの?」
由美を見つめていると、上から声が聞こえた。
そこに立っていたのは陽くん。
「うん。あたし歌うの苦手なの……」
「そっか」
あ、あたし自己紹介してない……。
「あの、自己紹介……してなかった…」
「和泉絢だろ? 俺、一ノ瀬陽」
一ノ瀬陽。
陽くんは、そう強く名乗った。
これがあたしたちの初めての出会い。
そして、微笑む姿に魅せられた。
「よ……陽くん、同じ学校なんだよね?」
「あぁ。つーか、“陽”でいい。緊張されると移るし」
図星。
陽く……陽と話すとなぜか緊張しちゃう……。
たぶん、さっき見た笑顔にドキドキしてしまったから。
「陽って呼べよ? 絢」
「う、うん!」
「なんだ……。笑うとすげぇかわいいじゃん」
「へ!?」
「や、普通にしててもかわいいけど、さっきまで目合さないし、笑顔引きつってたから」
陽はあたしに話したあと、またニコッと笑う。
なんか……。
あたたかい。上っ面だけじゃなくて、心からあたたかい……。
たとえるなら、太陽?
まだ、少ししか知らないけど……少なくとも、表裏のない人だと思う。