陽はあたしの顔を優に気づかれないように見ている。
ギュッと目をつむると、陽はくすくす笑いながら……





「そうなんだわ。 だから、優と奈菜でどこか行けよ」


「はぁ!? ふたりじゃつまんねぇよ」


「いいじゃん。俺は絢とふたりきりがいいんだよ」





陽は嘘に合わせてくれた。

陽の手を強く握ると、陽は優しく握り返してくれた。


奈菜がんばれ……。





「あっ! あたしとじゃいや?」



「イヤじゃねぇよ。 じゃ、どこか行くか」





ほっと胸をなでおろすと、陽があたしにコソッと耳打ちした。
陽の甘く低い声があたしの耳をくすぐる。





「お礼、忘れるなよ……」





このいたずらな瞳
いたずらな笑顔

こんなきれいなすべてに吸い込まれてしまいそう





「…っ……イヤ」



「ん?イヤ? なら……」





陽は優と奈菜のほうをちらっと見る。

オロオロして困っていると、もう一度あたしの瞳をのぞきこんだ。
……ダメだ。
完全にドSスイッチ入ってる……。






「で……。 本当にイヤ?」


「……うっ……」


「もう一度聞くけど? イヤ?」


「イヤじゃ……ないです……」





あたしのあごに手を添えていた陽は
その手をあたしの頭に持っていった。





「いい子いい子」


「もう、子ども扱いしないでよ……」





子どもなのはいつもあたし。


いつだって陽に


頼って

寄りかかって

助けてもらって




こんなあたしを、陽はどう思っているの?

考えれば、考えるほど

つらくて、苦しくて不安になる。