会話は少なかったけど、優といられるようになると思うと
そんなことどうだってよかった。


一緒に歩けば、あっという間に学校につく。




「寒いね……」


「はぁ……。 バカ絢」





優は少しため息をつき、自分のマフラーを取って差し出してくれる。

優のほうが絶対寒いのに。





「ほら。風邪ひくなよ」



「え……優が寒くなるよ……」



「いいんだよ。俺は暑がりだから」





あたしの首に優は自分のマフラーを巻いてくれた。
優の爽やかで甘い香りが強くなる。

懐かしさと、恥ずかしさと、嬉しさが混じった。

そして、
それと同時に、悲しさや、罪悪感が襲ってくる。


この罪悪感は、

こんなに優しい優を傷つけてしまったことに……
優が大好きな奈菜へ悪いという罪悪感



あたしの首にマフラーを巻いた手が頬に少し触れた。
ひんやり……いや、それ以上に冷たかった。





「優、嘘下手だよ」


「……?」


「本当は寒いくせに」


「ハハッ……。 俺の嘘は昔から絢には通じないんだな」





きれいに笑った優。
きっとその、爽やかな笑顔は陽にも負けない。


あたしは優の手を自分のコートのポケットに入れ、カイロを握らせた。