「この匂いイヤだった?」
「うん」
「絢のイメージに合う香水だと思ったのに。女物の香水選ぶのって、すげぇ恥ずかしい」
「選ぶ?」
なんで女の子ものの香水がいるんだろう?
陽の息が耳にかかる。
くすぐったい
「誤解してるようだから言うけど、今日、優佳と真奈美に香水選んでもらってた。絢のイメージにあう香水」
「なんであたし?」
「俺と同じのでもよかったんだけど、さすがにダメだと思って」
「あたしのため?」
「あたりまえだ……。変な誤解すんなバカ」
「だってっ」
陽はあたしをくるっと回転させて、前から抱きしめた。
ドクン…… ドクン……
規則正しい陽の鼓動が聞こえる。
「絢、俺は一生、絢だけ見てる」
「陽……」
陽を疑ってしまったことを後悔した。
こんなにこんなに大切にされているのに、あたしは陽を疑ってしまった。
もう、疑わないって決めたのに……
あたしの心は、すごく弱い。
陽……
こんなあたしでごめんなさい。
こんなあたしを好きになってくれて、ありがとう。
「俺さ、結構独占欲強いんだよ。だから、俺の知らない匂いとかイヤなんだよ」
だからなんだ。
陽があたしに香水を選んでいたのは。
照れながら言う陽の顔に、ドキッとした。
鼓動が早まるのがわかる……。
卑怯なんだよ、陽は。
いつだって、簡単に心を奪っていく。