「さて!! 次は奈菜の話をしよーか!!」


「ええっ!?」


「聞かせて? あたし、最近優と話してないし……」




真っ赤に顔を染めた奈菜を問い詰めた。




「桜樹くん……最近よく話しかけてくれるよ……?」



照れながらもうれしそうに話してくれる奈菜。




「たとえば、なに話すの?」


「『メガネじゃない方が似合うよ』とか『今度一緒に買いに行こう』とか言ってくれたり……ご飯に誘ってくれたり……」




奈菜の話をあたしたちはうなずきながら聞いた。

よかった……。
奈菜は優と一緒にいられて嬉しそうだし、優も奈菜のこと意識して誘っているんだろう。




「やっと桜樹も絢から卒業したね!!」


「……でも」




由美はニコッと笑っていった。

あたしは……
優との距離は正直寂しい。でも、それが友だちになる代償なのだとしたら我慢できる……。


由美の言葉に奈菜は「でも」と付け足した





「どこか寂しそうなの……」


「優が?」


「うん。なんか絢と離れて余計に想っちゃうんだと思う」




奈菜の言葉に胸が痛んだ。
優の悲しい顔を見るのはつらい……。

そんな顔をさせてしまっているのはあたし。

……あたしが優を好きになっていたら、悲しい顔はしないですんだ?

そう思わずにはいられなかった。





「ごめんね……」


「絢が謝ることじゃないでしょ?」




奈菜の優しさが余計に胸を締め付ける。
優に……そういう選択をさせたのもあたし。

あたしの彼氏が優の友だちじゃないだれかなら……。





「でも正直、一時は絢がねたましかった」





そうだよね。

そう思われたってしかたがない。
あたしの顔を見て由美がそっと手を握ってくれた。

あたたかい由美の手はあたしの心を落ち着かせる





「ごめんね絢。絢がうらやましくて……」


「奈菜……」


「桜樹くんをそこまで想わせられる絢。桜樹くんを笑顔にできる絢。だけど、絢を好きな桜樹くんの気持ちがわかるから」


「から……?」


「そんな風に思うのはやめようって」





奈菜がこんなに前向きだと思わなかった。

最初はただ、友だちになりたかっただけ……。話せればいいと思ってただけ。


でも……
いつの間に、大切な親友になっていたんだろう





「そんなゆがんだ気持ちでいたら、桜樹くんはあたしを好きになってくれないよ」


「「奈菜……」」


「なにもかも絢に劣るあたしが、唯一絢に勝るものは、ただ真っ直ぐに桜樹くんを想う気持ちだけだから!!」