「ちょっ……!! おい泣くなって!」


「よぅ……っ……」


「ほらほら泣かないでください? お姫様?」




こぼれるあたしの涙をペロッとなめた陽。
顔が一気に熱くなるのがわかる……。

あたしは……たぶん、今……真っ赤だ





「絢? 今、絢にできることはなんだと思う?」


「あたしにできること?」




考え込むあたしをみて陽はあきれ顔をした。
けれど、すぐに微笑み……

真っ直ぐにあたしの瞳をみつめる




「悩むな」




思い浮かばない……。

ずっと考えているあたしを、陽は優しく抱きしめ。その左手があごにそえられた。




「あと10秒以内に答えがでねぇなら……」


「なら?」


「キスする。激しくディープにな。ほら、10……9……」




えっ!?

10秒以内って無茶な……。





「6……5……」


「まっ……待って!!」


「待たねぇ……3……2……いーち」


「陽!!」


「ゼーロ。時間切れ」




陽の顔が近くに迫った。
反射的に顔を下に向けると、そえられた陽の冷たい手が阻止する。





「絢にできることは、俺だけをみて、俺だけを好きでいること。よそ見は禁止。特に優」


「くすっ。……そうだね」




優しい陽の言葉に心がじんわりとあたたかくなる。


そう……。
あたしにできることは、目の前の陽を大切にすること