「本当の愛情……」





クスッと笑った優はあたしに教えてくれた。
本当の愛情の意味を―――…。





「俺が思う本当の愛情は“自分がその人のためにしてやれることをする”ことだと思ってる」





言おうとしていることはわかった。

優の愛情は、あたしをあきらめること。
あきらめてあたしの幸せを願うことこそが本当の愛情だと……。


もし、あたしが優の立場だったとしても同じことをしたのかもしれない。


だけど、あたしがここで優を引き留めようとすることは優を傷つけること。そんなことをしてもしかたない。

だからあたしは、素直に受け止めた。





「じゃあな……」





あたしの手を包んでいた優の手は離れ、そして優も背を向けて歩いて行った。



それは……16歳の秋のことでした……。

大切な大切な人を苦しめてしまった。
あたしに人を好きになる資格なんてあるのかな……?

そう、悩みに悩んだ。


だけど……優の言っている愛情こそが、本当の愛情だとあたしでもそう思えた。



人を愛して恋をすることで……

自分はこうもイヤな子になるんだって思ってしまった―――…。