「うん……。だけどね桜樹くんはお調子者ってだけじゃないと思う……」




そう……。
優は、本当は、物事を裏の裏までよく読んで行動する超堅実派。
その内面を知っているのは、ごく一部の人だけだろう。





「奈菜!頑張って!あたしは応援してるよ」



「ありがとう絢……。でも……桜樹くんは絢が好きだって知ってるから」



「……っ…どうして?」



「前に桜樹くんが言ってたんだぁ……。『俺はずっと支えるんだ』って。それって、桜樹くんが絢を傷つけたくない。守りたいってことだと思うから」





奈菜は優しく微笑んだ。

本物の恋をしている大人の微笑み方。


どうしてこんなに強くいられるんだろう。
自分の好きな人が自分じゃないだれかを見つめているのはつらいことなのに……。


あたしだったら……
こんなに強くいられない。





「奈菜……」



「そんな顔しないで! あたしは桜樹くんからの見返りなんて求めてないの」





このとき、あたしは初めてわかったの


本当の愛情の意味


それは……
相手の幸せをいちばんに願うこと

見返りも打算も求めない純粋に信じて想うことが……



本当の愛情で


本当の愛し方。





「桜樹くんが絢を好きなのは仕方ないもん。」



「たしかに! 陽くんが絢を好きになったのもわかるもん」



「……え……?」





由美と奈菜はニコッと笑ってあたしに言った。


あたしは一生このふたりにはかなわない。
好きな人の気持ちを知りながらも応援して、それでも自分の好きな気持ちを大切にする。

あたしはどちらか一方しかできない。


そして必ず、自分の気持ちをなかったことにする。



だから、そんな真っ直ぐで強いふたりには一生かなわない。





「「絢は素敵な女の子だもん」」






どうしようもないくらい、ふたりが好き。



あたしは最高の宝物を持っているよ……。