小さいうちから、陽はいろいろなものを背負い込んで、たくさん悲しい思いをして……。

陽がいつも明るくしてるのは、きっと……悲しみや苦しみを隠すため。







「さっきは悪かったな」


「なにが?」


「あいつら両方いると思わなくて。なれなれしすぎるんだよ」


「全然! 陽のお姉さんたち美人さんだね」


「そうか?」







ソファに座り直すと、陽が隣に座った。

いつもより距離が近くて……なんだか……緊張しちゃう。







「ぷっ。今さらなに緊張してんだよ。普通にしてろ」


「だ……」


「緊張されるとうつる」






赤面した陽をくすくす笑うあたし。
しばらくすると、陽の瞳が真剣になった。






「どうしたの?」


「……俺の話、していい?」


「もちろん」






あたしの答えに陽は、優しく微笑むとすぐ表情が変わった。

悲しそうに部屋の天井を見ている。
真剣な顔で、なにも書かれていない天井になにかあるかのように。


なにかを読み取ろうとしているみたいに……。







「俺は生まれてきちゃいけなかったんだ……」






予想外の陽の言葉に、驚いて目を見開いてしまった。







「俺たちは……捨てられたんだよ……」


「どうして……」


「母親にとって俺と姉貴らは邪魔なコブ。産まなきゃよかったのに、妊娠に気づいたのが遅くて、中絶できなかったんだってさ。3回も同じことをするバカ女」






初めて聞かされた、陽の出生……。
それはあまりにも衝撃的だった。







「姉貴らとは異父姉弟。俺らは父親がだれかもわかんねぇ。母親……あの女を母親だなんて思いたくもねぇ……。俺らを捨てて、今は外国で優雅に暮らしてんだってさ……」






陽は自分をあざ笑うかのように話していた。