『ばぁーか。』
『!?』
『芹那がそんなことするわけないでしょ。芹那にとって、兄貴は頼れる唯一の存在なんだからさ。』
『それ…もしかして、芹那ちゃんがそう言ったのか?』
『そうよ。初めてだったって言ってたよ。こんなに自分が信じられるって思ったの。兄貴だけだってさ。』
郁人の顔に、喜びの表情が出る。
そんな郁人を見ながら、智愛は“頑張れ”と郁人にエールを送っていた。
それは、長年子どもを見守り続けて来た母親のような感情にも似ていた。
『ってわけで、ちゃーんと芹那を守んなきゃね?お兄ちゃん?』
『っ……』
ゾワゾワッと背中に悪寒が走り、震える郁人。
2人の間に凍った空気が流れているところへ――…
「――あー気持ち良かったぁー♪」
芹那がやってきた。

