『その客に逃げられたことで落ち込んでもいた。でも、その次の週には元気になってたよ、芹那のおかげでしょ?』
「え?…どうしてそう思うの…?」
『その時くらいから、その客の名前言ってたから。“芹那ちゃん”って。女で、しかも客をちゃん付けで名前で呼ぶなんて、兄貴が芹那を気に入ってる証拠だよ!』
「そんな……///」
郁人さんのお気に入りが私なんて……
『それに、女の子を身内の私に預けるなんて今までの兄貴じゃ有り得ないんだから!』
「そ、そうなの?」
『うん!芹那も知ってるでしょ?兄貴が女の子嫌いなこと。そんな兄貴が女の子に微笑んでるなんて、天と地が引っくり返るくらいすごいことなんだから!』
「そう、なんだ……」
ねぇ、郁人さん。
郁人さんは、本当に私のこと、信じてくれてるんだね――…。

