「天野…芹那、です…。」
『せりなちゃんね。後で漢字も教えてね。じゃ、こっちへどうぞ。兄貴、案内。』
『はいはい。』
笑顔を浮かべたちえさんは、またキッチンへと入っていった。
優しい笑顔…。
やっぱり兄妹なんだなと思った。
「しっかりされた妹さんですね。」
『しっかりすぎはどうかと思うけどね。』
「ふふっ…」
久しぶりに笑ったような気がした。
仕事中も、作り笑いしかできなかったから――…
『こら。』
「いっ…!?」
ボーっとしてたら、いきなりいくとさんにデコピンされて思わず立ち止まる。
何気にデコピン痛いです、いくとさん…。
『ここではあまりストーカーのこと考えちゃダメ。しばらくは何も起こらないと思うから。』
「……はい。」
私が返事を返すと満足そうにいくとさんは笑って、リビングに案内してくれた。
…そうだよね。
せっかく、いくとさんが私のためにこんなにしてくれてるんだもん。
何も心配しなくて良い。
マイナスのことなんて考えないようにしよう。

