「――できた!」
元々、マフラーは編み進めていたので、集中して編んでいると、ほんの2時間ほどでマフラーは完成した。
時刻は4時過ぎ。
「…郁人さん、まだかなぁ…。」
ぽつり、私の心の声がこぼれる。
郁人さんに会いたいなー。
昨日の夜、確かに郁人さんと会ったはずなのに、それは遠い昔のことのようで。
確かに、この手に郁人さんの体温を感じたはずなのに、私の手の中は空っぽで。
「早く来ないかなぁ…郁人さん」
病室で一人、私の独り言が絶えることはなかった。
「あまりにも来るのが遅かったら、承知しないんだから。」
この時ばかりは、満足に動けない自分が嫌になった。

