――「♪~~♪♪」


赤い糸を紡ぎマフラーを完成へと近づけながら、私は鼻歌を口ずさむ。

さっき来ていた智愛ちゃんが、どうせ暇なんだろうから、とわざわざ家から持ってきてくれた、私の作りかけのマフラーだ。


ガラッ

『天野さーん、採血のお時間ですよー。』


そう言って入ってきたのは、私の担当の看護師さん。


『では、バイタル取って、採血しますねー。』

「は、はい…!」


実は注射が苦手な私。

病院もあまり好きじゃないのも事実。

だって――…


『何、作ってるんですか?』

「え?」


袖をまくられた右腕に圧をかけられながら、私は答える。


「マフラーです。」

『へぇ、編み物できるなんてすごいですね。あ!もしかして…いつも天野さんのお見舞いにいらしてる方にプレゼントですか?』

「へっ、え、えっと…、まぁ、はい。」


自分で言いながら赤面。

そんな私とは対照的に、看護師さんは興味津々の様子で続ける。


『やっぱりそうなんですね!あんなイケメン捕まえてるなんて、羨ましいわ。』

「えっ!?そ、そんな、捕まえてなんて…滅相も」


またまた~、と言いながら、看護師さんは脱脂綿に含ませたアルコールを右腕の静脈の上に塗る。