「ごめん、なんて…言わないでっ!」
『芹那ちゃん――』
謝らないで。
謝ってほしくない。
私は…ただ、いつものように名前を呼んでほしいだけなのに。
「私は…楽しかった。郁人さんと智愛ちゃんと、3人で暮らして、これ以上ないくらい、幸せだった…っ。」
『…――』
「なのにどうして、離れていこうとするのっ?ごめん、なんて言うのっ…?」
涙が止まらない私を支えながら、あの時みたいに涙をぬぐってくれる郁人さんは、やっぱり優しくて。
握りしめる手に、精一杯の力を込めた。
「郁人さんがどう思ってるか分かんないけど、でも…っ!私は少なくとも、郁人さんから元気をもらえた!勇気ももらった…!」
守ってくれ、なんて言わない。
頑張ろうって、思わせててくれただけで、
戦おうって、思わせてくれただけで、私は十分感謝してるから。
「私には…郁人さんのいない毎日なんて、堪えられないの…ッ!!」
『ッ――!』
その瞬間、
「ひゃ――っ」
強い力で、引き寄せられた。

