一人教室を出て廊下を歩いてると、窓の外、仲良く手を繋いで歩くカップルを見かけた。

 何の気なしに見つめてると、彼女が俯いてるのを無理矢理顔を上げさせて何かを耳元で囁く彼氏。


 彼女は顔を真っ赤にして、そっと、彼氏の袖口を掴んで……


 唇が、重なった。


 ほんの一瞬の出来事だったけど、彼は笑顔で……

 私に向けた事のない笑顔で、彼女の頭を撫でた。


 幸せなんだね。

 あの子も、あなたも。


 嬉しいよ?

 だってずっと彼女を見ていたのを、私は知ってる。



 あなたと“彼”は、ずっと彼女を見てた。


 ただ、この瞬間。

 隣にいるのは“彼”じゃなくて、あなただって事。



 ……私の“友達”じゃない、事実。