あの日君はいなくなった。
俺は死に目にも会えなかった。

でも君は死ぬ一週間くらい前病室のベッドの上に横になってにこう、いったんだ。

「柚木くんは幸せになってね」

小さな、でも力強い声で。
そういった。


そのときはよく意味がわからなかった。

でも、わからないはわからないなりに解釈して
「おぅ。わかった。安心しろ」
って言った。

それの意味、今ならわかるよ

恵梨は最後まで優しかった。

自分がもう、長くないことを知って。
それでも俺の幸せを、


願ってくれた。